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邸内社の修復について宮大工が解説

企業神社
2021.09.08
竣工に伴う遷座祭

邸内社(ていないしゃ)とは、邸宅の敷地内にある社殿の事をいい、個人版の神社の事をいいます。企業神社が企業にある神社という位置付けであれば、お宅にある神社が邸内社ということになります。企業や邸宅も神棚という神社の出張所がある中、神社との密接な関係がある場所に小宮が御造営され、邸内社や企業神社として存在します。

邸内社の腐食及び劣化事例

邸内社は、屋外にお祀りされる外祭宮になりますので、維持をしていくためには、雨との戦いになります。雨により濡れやすくなるという事は、白蟻と不朽菌の被害を受けやすいので、維持管理上の注意事項として覚えておきたい所です。外祭宮に形式で一番被害を受ける部分は、土台になります。外祭宮の多くは、石・人造・コンクリートの基壇(地上より1メートルほど立ち上がる基礎)の上に直接設置される場合が多く、基壇の天端にたまった水はけが悪く、土台が常に水を吸い上げる状態になっているケースをよく見ます。その場合、水が常にある訳なので、土台に不朽菌が繁殖し、木材が腐っていくか、白蟻に発見されてしまい、シロアリの被害を受けるというのが被害事例で最も多いケースになります。

神具店の悪しき風習

昭和あたりから外祭宮などの小宮は町の神具屋さんが行うケースが多く、基壇に直接設置する納まりがよく見受けられます。このようなケースの場合、土台が腐食してしまい、数十年に一度、小宮を再建しないといけなくなります。これは、社殿が長くもつようになると仕事を再び受注できなくなるために、あえて腐食されるようにしているという風に神具屋さんから聞いた事があり、腐るとわかっている納まりで納品するのが果たして良いものなのか?疑問をもった事を今でも憶えています。現在、弊社では、土台を腐りにくくするために、基壇と土台との間にゴムパッキンを設ける事と、基壇の水捌けがよくなるように基壇の天端を触る仕事をする場合は、水勾配を設けるなどの対策をし、小宮を長くお祀りできるように心がけています。

式年遷宮

伊勢神宮では、20年に1度 社殿を造り替える式年遷宮があります。それに合わせて企業やご家庭の神棚や小宮を式年遷宮する事もよく聞きますが、これは伊勢神宮に関しての制度で、企業や家庭は絶対ではありません。しかし、企業経営者や家庭の主人がこの伊勢神宮の式年遷宮のタイミングにうちの神様に新しい社殿を御造営し、常若(とこわか)を示す事は、大変意義のある事と思い、それが意図して腐食されてやむおえずというよりも、そのようなお気持ちで行う事の方が大切と考えています。

兵庫県にある邸内社の修復事例

兵庫県のとある邸宅でお祀りされている邸内社になります。屋根の銅板葺きは、まだ持ちそうでしたので、木部の腐食部分の取替えでの修復プロジェクトとして提案させて頂きました。

土台などの腐食

土台の腐食

基壇の表面仕上げの洗い出しが土台に塗りつけて納める方法になっており、取り合い部分に水が入り、水溜りとなるような納まりになっていました。結果として、菌が繁殖し、木材が腐食しています。

白蟻被害

蟻道の確認

内部床下に白蟻の活動を示す蟻道(ぎどう)を発見しました。常に水が確保できるような場所では、そこを拠点として白蟻が活動をします。土台は、不朽菌と白蟻によって大半が被害を受けていました。

白蟻の駆除

白蟻の駆除は、文化財でも使用されるキシラモンという薬剤を使用して駆除しました。念の為、屋根にも浸透されると隙間から白蟻の羽蟻が逃げ出そうと出てきて、薬の効果が早かったので、飛び立つ前に死んでいきました。

腐食部材の交換

土台の他に玉垣や嵌板も腐食していたので、交換しました。土台を取り替える時に、以前と同じ仕口(仕事)で納めました。

基壇の納まり変更

以前と同じように納めてしまっては同じ原因で腐食するため、基壇部分の仕上げ塗り込み部分の段差をモルタルで埋めて、水勾配を少しつけて中で水がたまらないようにする事と、基壇と土台の設置面にゴムパッキンを敷いて、水が切れるようにして納めるように計画しました。

遷座祭について

工事に取り掛かるにあたり神様がお住まいのまま工事にとりかかる事はタブーとされています。そのため、神様に一度お引っ越し頂き、工事完了後に再びお戻り頂く儀式の事を遷座祭(せんざさい)といいます。神事なので、神主さんに出張でお越し頂くため、出張祭典の費用がかかります。そのため、これは予算がないのでやらなくて良いですか?とか一回だけでいいですか?とかいう事を仰る方がおられますが、これだけは絶対にNGです。神様に対する配慮が欠落しています。たしかに予算はかかってしまうのですが、これをして頂けないと工事をする側としても怖くて工事が出来ません(><)必ず遷座祭りを行って下さい。

新技術:エアー鉋

今回は、洗いの代わりに「エアー鉋」という新技術を用いて施工させて頂きました。お社を綺麗にする際に、灰汁洗いという施工方法がありますが、ポンプで作業をしたり熟練工が作業しないと木部が毛羽立ってしまいます。そこで、エアー鉋というサンドブラストのような方法で、木材の粒子を吹き付けする事により、木材の粒子で既存材を薄く削るような処理を行うことができます。さらに、その上で、エアーサンダーにて研磨し、表面を綺麗に保つ技法が出てきたので、今回は実験的に導入させて頂きました。写真の右側にエアー鉋の前後の様子です。古い状態との差がよくわかります。

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